富田木歩 その6
遠火事に物賣通る静かかな
大正十年作。火事が冬の季語。遠くの火事。物売りが知らせて歩いているのか。煙でそれと分かるのか。野次馬が群がることもない。物売りは何を商っているのか。その物売りの声だけが響いているのか。ただ、静かなのだ。つまり「静か」を詠んだ句。芭蕉の岩にしみいる蝉の声の句に比べては、いけないか。場末の物悲しい風景は見える。
なりはひの紙魚と契りてはかなさよ
大正十一年作。紙魚が夏の季語。「しみ」というルビあり。「貸本屋をいとなみはや一年に及ぶ」という前書がある。姉の家の三畳間を「平和堂」という貸本屋にした。近くの苦界で働く女性が主な客だった。契るべき女性とも結局は出会わず紙魚と共に生活する。季節の夏の感じはしない。秋か冬。貸本屋家業を嫌ってるわけではない。自分の来し方行く末を果敢無んでいるのか。
女出て螢賣よぶ軒淺き
大正十二年作。これには夏の季節感がある。近くの家の女性が蛍売りを呼び止めている声が聞こえる。浴衣姿であろう。もっと近しい、いや恋人でいて欲しかった隣りの小鈴だったのか。
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コメント
はじめまして!
富田木歩という人物を初めて知りました。
こういう方もいらっしゃったのですね。
参考になりました。
投稿: やいっち | 2007/12/26 19:13
やいっち様
コメント並びにトラックバックありがとうございました。早速あなたのブログ読ませていただきました。とても豊穣な世界が広がっていました。「お気に入り」に登録して、愛読させていただきます。
投稿: mitleben | 2007/12/27 16:47