いつもちこくのおとこのこ その5
3.ポスト・モダンとは何か
ここに詳しく踏み込むと大変なので簡単に触れる。ネットの検索窓に「ポストモダンとは」と入力して、わたしの半可通な解説を補っていただきたい。
近代(モダン)においては、大半の人々が人類の進歩や解放を自明のこととして捉えてきていたが、そのなかで、見落としてきたこと、無視してきたことがあり、そちらに、目を向けることに価値を見出そうとするようになった。これが、ポスト・モダンである。近代が終わったという意味のポストではなく、近代主流からの逸脱した分散化が起きる状態を言っている。
絵本界においては、ビアトリスク・ポター、ワンダ・ガアグ、ロバート・マクロフスキー以来の流れがモダンで、1970年代以降にポスト・モダンの絵本が出現する。アメリカでの旗手がモーリス・センダック、イギリスでは、アンソニー・ブラウンやジョン・バーニンガムが代表選手であろう。もちろん現在でもモダン絵本はなくなったわけではなく、今でも主流であるかも知れない。
4「.いつもちこくのおとこのこ」を読む
ネットで検索すれば、たくさんの子どもさんの評価を知ることができるが、大方は
先生を最後にやっつけて面白かった
ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシーの繰り返しが面白かった
の2点に集中している。 もちろん、その評価にわたしも疑問をもたないし、おそらく作者も、それでいいと思うだろう。
ところが、それだけの絵本では当然ない。次から次へと疑問がわいてくるのだ。それを整理して、ある程度「作品論」らしく、まとめていきたいのだが、今は、その自信がない。そこで、アトランダムに疑問点をピックアップして、終わりたいと思う。ポスト・モダンの絵本は、きちんとした作者の考えを提示しないで、読者に解釈を委ねることが多く、どう考えるべきだという正解を求めてはいない。この「あいまいさ」こそが、作者の表現そのものであるといえる。
①表紙の絵の選択
パート3の「たかしおの部」で使用した絵の転用であることは先に述べた。先生を描いた絵は8枚あるが、この絵だけが、権威の象徴でもあるステッキを持っていない。それを何故表紙に持ってきたか?大きなタイトルを入れるスペースを確保するため、つまりデザイン上の理由が一番大きいとわたしは思う。ただ、この絵ではジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシーと先生の体の大きさの比が1対9、名前の長さと正確に反比例(英文ではJohn Patrick Norman McHennessyとSir 27文字対3字)しているのは単なる偶然か?イギリス人の姓名の成り立ちで、この4つの部分からなるのは、普通のことなのだろうか?
②見返しの書き文字
作者の甥?だとかに、書いてもらったとか。汚れをそのまま使い、liesをliseと誤記しているのも愛嬌か。これはパート1の罰そのものの再現だが、わたし自身は、成功だとは思えない。「あいまいさ」の全くない剥き出しの現実が出ていて、つまらないと思う。
③標題紙の絵 前述したとおり、左方向なのが気になる。
④文章と絵
この時期のバーニンガム作品では珍しく、絵をみないで文章だけを読んでも成立している作品だ。だといって、絵の働きが弱いということはない。文章をより判りやすくする働きをしている絵もあるが、本作品の絵の特徴は、主人公の心理を表現しているところにある。だが、それでもなお、よく理解できない「あいまいさ」が残る。
ア.勉強しに出かける場面
スタートとトラブル解消後の2種が3パート分6場面。それにパート4に3場面あるが、時刻と季節とジョンの心理の表現を読み取ってやろうとしたが、意味ある結論は引き出せなかった。朝日の出る前、日が大分高くなってからまでは、わかるが、あとはまた朝日か夕日かも不分明なところがあって、読みきれない。set off along the road to learnの部分は、作者の体験(10校もの転校)で、親の決めたroadを歩き続けた時代の反映だろう。夜が明けたのはサマーヒルの選択制学校に入ってからだろう。最後の絵もまだ、夜明け前である。
イ.一見拙い線画の傑作
<もうライオンのうそはつきません。ズボンもやぶりません>の場面の絵の雄弁さはどうだろう。ジョンのこころをこんなに的確に表現した絵のすごさ、本書中の最高傑作だと思う。あとの絵も背景なしの部分の絵がいいとわたしは思う。
ウ.なぜいない同級生
ジョンはなぜいつも1人なのか。先生も1人なのか。これは、逆デフォルメなのだろう。理解されない子どもたちは大勢いるし、理解しない先生たちも大勢いる。あえて、1人だけ登場させて、問題をクリアにして提出している。遅刻を叱られている時、同級生が傍にいては、子ども対先生の構造に歪みが生ずると、わたしは思う。
5.おわりに
ジョン・バーニンガムは、絵本というメディアでできることを常に考え、誰も手がけていない分野を開拓してきたようだ。最近の作品には接することができていないので残念だが1936年生まれのベテランの意欲を凄いと思う。絵本のアイディアが生まれるとキャラクターの性格づくりに3~4ヶ月、実際の絵を描くのに3ヶ月、本のデザインに3~4ヶ月かけるそうだ。つまり、まる1年かけて1作を仕上げるのだから、絵本というメディアは、大人が読んで面白いのは当然のことなのだ。
参考文献はサイドにアップして、ここでは省略。web siteも参照したが、アドレスのメモを怠った。googleの検索まどにJohn Burninghamを入力して引き出して欲しい。
以上

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